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リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析

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トランプ応援団は、日本の滅亡も応援している②(断韓・反韓は日本の国益を害する) ※米中の経済力比較

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今回の記事は、米中の経済面でのバランスオブパワー(勢力均衡)の観点から見て、トランプの反韓的な姿勢が米中の覇権争いにどのような影響を与えたかを説明するものである。

前回の記事では、トランプが米国内の対立を煽ることは、米国の外交への比重を下げさせ、米国の国際的地位の低下を招き、それが覇権争いで中国を優位にし、その結果、日本の核武装のための残された貴重な時間を削り取るから、トランプを応援している日本人は、日本の国益を害していることを書いた。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp


トランプは韓国との同盟関係を軽視したりなどして、韓国の米国離れを強めさせたが、この事は米中覇権争いにどのような影響を与えたのだろうか?

www.jiji.com

www.wowkorea.jp

 

アメリカは核武装国とは戦争しないと決めているから(※この理由は伊藤貫氏の著作などで核戦略論を学んでいただきたいが、別の記事にするつもりである)、対中戦略は経済的に中国を弱体化させるというものに限定される。つまり、経済的な中国封じ込めが基本的な対中戦略となる。

 
米国が米ソ冷戦で勝利できたのは、米国の側に付く国が多かったからである。ただし、ここで留意すべきことは、多くの国がアメリカ側に付いた主たる理由が、政治的なイデオロギーによるのではなく、その当時の米国のGDPの世界シェアがソ連に較べて遥かに高かったので、ソ連より米国と経済的取引をする方が、経済的利益を多く得られたからというものである。米国のGDPが大きいということは、米国にそれだけ輸出できること、米国内で事業をすれば儲けることができること、米国に投資すればそれだけ利益を得られることを意味するから、米国との経済関係を重視した国は経済成長することができ豊かになれた。

そして、米国はその経済的利益と引き換えに、自陣の国々に対して、ココムでソ連への先端技術の輸出を禁ずるなどしてソ連経済を弱体化させることができた。

(※国家が、政治的イデオロギーよりも、経済的な損得を優先して、外交方針を決める理由については、また別の記事にするつもりである)

従って、米ソ対立と同様に、米中対立においても、米国の側に付く国が多ければ多いほど、米国は優位になれる。逆に、中国の側に付く国が増えれば増えるほど、中国封じ込めを緩めることになるから米中の経済格差は拡大し続けるし、米国の中国への制裁なども効かなくなる。その結果、中国が実質GDPで米国の二倍になるということがいずれ実現してしまうことになる。そして、二倍になれば、米軍は東アジアから撤退せざるをえなくなるので、日本は滅亡する(※前回の記事で既述)。

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www.visualcapitalist.com より引用。



しかし、米ソ冷戦の時と、今を比較すると無視できない点がある。それは米中の経済力で米国に優位性はないということである。そのことを実際のデータで見てみよう。

現在の米国のGDPの世界シェアは実質では15%しかない。対して、中国は19%である。前回の記事でも示したが、すでに2014年に実質GDPで中国は世界一になっている。

www.visualcapitalist.com

 

また貿易量(貿易総額)も、2013年に、中国が世界一になっている(中国は約4.2兆ドル、米国は3.9兆ドル)。米中貿易戦争の最中の2018年と2019年も中国が世界一である。このことは、アメリカよりも中国と取引をしたほうが(名実ともに)、経済的利益を得られる国の方が多いことを意味している。 
ecodb.net

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中国が公表する経済データは信用できないと思う人が多いかもしれないが、貿易統計は、相手国とのデータと照合できるから、中国はデータをごまかすことはできない。そして、貿易総額は、GDPと相関関係がある。翌年の2014年に実質GDPでも中国が世界一になったことは、この相関性を示している。つまり、GDPのデータも偽りでないと言えるのだ。

 

このように経済的な損得計算の観点から他国が米国と中国との関係での優先順位を考えた時、アメリカは中国よりも不利なので、アメリカが米中覇権争いで優位になるためには、一国でも多く、アメリカの側に付く国を増やすことが重要である。だから、韓国をアメリカ側に取り込み、中国側に付かせないことも戦略上重要なのである。この中国の経済的優位性を見れば、「韓国など不要である」などと言えないことが分かるだろう。

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経済力に基づくバランスオブパワーが、米中覇権争いの勝敗を分ける


しかしながら、伊藤貫氏は、2018年に、「中国封じ込めはすでに手遅れである」と悲観的な発言をしている。政治イデオロギーの違いよりも、経済的な損得を優先し、アメリカよりも中国との関係を重視し、アメリカの指示にも従わない国の方が多いからである。

従って、日本が取るべき戦略は、封じ込めによって、中国を崩壊させることを目標にするのではなく、できるだけ米国の側に付く国を増やして、中国が実質GDPで米国の二倍になる時期を少しでも遅らせ、核武装するための時間稼ぎをするという消極的なものにならざるを得ない。

トランプの反韓的な外交は、日本の国益を害し、日本の生存を脅かすものであったことは明らかである。


しかし、トランプ応援団の主力となっている日本の保守勢は、反韓国感情が強いから、トランプの反韓姿勢に拍手喝采をし、韓国の離米をむしろ喜んでいるのだ。これは、「外交議論に他国への好き嫌いの感情を持ち込んではならない」という鉄則に反する愚行であり、日本がいかに切羽詰まった状況に置かれているかということを全く自覚できておらず、まさに狂気の沙汰である。このような感情に基づく判断は、冷静な計算を狂わせるから、結果的に、日本の国益を害することになるのだ。外交とは、ビスマルクが言ったように感情を排し、冷静、かつ冷酷に行うべき「チェスゲーム」なのである。

前回の記事(トランプによる米国内の対立激化は中国を優位にし、日本の国益を害する)と同様、トランプの反韓的な外交は、米中覇権争いにおいて、中国を優位にしてしまうものであった。それは日本の滅亡に直結する。ゆえに、トランプを応援する人たちは、日本の滅亡に手を貸していると言える。そして、彼らを扇動しているのが、日本の国防について最も真剣に考えなければならない責任を持つ保守の言論人たちである。このことは、日本の外交・国防議論の知的レベルの絶望的な低さをよく表している。もし、そうではないと言うのならば、この人たちは、中国を利する方向に意図的に手を貸しているということになるから、中国の工作員であるとしか言えない。

ここに、前回の記事と同様の結論を記しておく。

日本が本来選択すべきまともな戦略は、できるだけアメリカに時間稼ぎをしてもらい、その間に核武装を進めることである。だから、トランプのように反韓姿勢を取らないバイデン大統領のほうが日本の国益になる。ただし、それは、日本が米国政府と核武装の交渉をして、それを成功させることが前提の話である。そうでなければ、日米同盟という名の日本の国防無力化政策を強いられたまま、ずるずると対米従属を続け、米国に見捨てられ、東アジアに丸腰の状態で取り残される結果となるからだ。言うまでもないことだが、時間稼ぎすることは目的ではなく、核武装するための手段である。

しかし、現実には、核の傘の信ぴょう性に関してすら、日本の外務省官僚は米政府と議論すらしていない。核武装のためのスタートラインにも立てていないということである。この絶望的な状況を日本国民のほぼ全員が認識できていない。日本は日々、滅亡へと近づいていっている。


日本外交のレベルの低さによる絶望的な状況は下記の記事にも書いている。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp




(貿易額、貿易総額、実質GDPGDP世界シェア)