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トランプ応援団は、日本の滅亡も応援している③(トランプは、中国経済の優位を強めた)

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前々回の記事では、米国内の対立を煽るトランプを応援している日本人は、日本の国益を害していることを書いた。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

 

前回の記事では、反韓姿勢のトランプを応援している日本人は、日本の国益を害していることを書いた。 

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

 

今回の記事では、トランプ政権下で米中の経済力差がどのように推移したのかを説明する。

「米中の実質GDPで二倍の差が付けば、日本は滅亡する」ということや、米中の覇権争いにおいて、中国経済を弱体化させることが米国が優位に立つためには極めて重要なことは、前回と前々回の記事で説明しているので確認して頂きたい。

 

それでは、トランプ政権下での米中の実質GDPを確認してみよう。なお、前回の記事で説明したが、中国が発表している実質GDPのデータが偽りである可能性は、ないと言って差し支えない。

 初年度の2017年は、中国は19.814兆ドル、米国は19.542兆ドルであったから中国は米国の1.01倍であった。2018年から2019年にかけて中国と貿易戦争を行ったが、2018年度は1.05倍(中国21.659兆ドル、アメリカ20.611兆ドル)、2019年度は1.09倍(中国23.393兆ドル、アメリカ21.433兆ドル)であったので、毎年、米中の経済力差は拡大していっているのが分かる。

ecodb.net

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また、トランプの中国への関税による攻撃は、見た目は派手であったが、中国の経済弱体化には効果がなかったと言える。トランプは選挙対策のために中国と戦っているというイメージを有権者に植え付けたかっただけだったという疑いが強い(※別の記事にする予定だが、トランプと習近平の関係は親密である)。

また、貿易戦争の成果とされている「第一段階の合意」(2020年初頭)についても、

jp.reuters.com

トランプ政権の通商政策に詳しい関係者は「トランプ氏は具合の悪い状態で身動きできなくなっている。合意を維持しても空手形だし、合意を破棄して行動を起こせば、景気の悪化や混乱を引き起こす」と述べた。

と評価されている。

 

次に2020年度の実質GDPを確認してみよう。

中国は24.16兆ドルで、アメリカは20.8兆ドルだから、中国は米国の1.16倍になった。その前よりも格差の広がりが大きくなった。この原因は、米中のコロナウィルスに対する対策の違いである。厳しい規制をかけない場合、死者が増えるので、その結果として人々は経済活動を自発的に低下させてしまうのである。この事は、緩い規制を行い、多くの死者を出したスウェーデンの方が、厳しい規制をかけた近隣の北欧諸国よりも経済数値が悪くなった事実により明らかである。トランプはコロナウィルスの対応策を誤ったのである。だから、トランプの失策により、米中の経済格差はより広がったと言える。

また、今回のコロナウィルス対応へのトランプの失策による米国のGDPへの悪影響は2020年度だけに留まらないという予測も出ている。名目GDPで中国が米国を追い抜く時期が5年早まったという報道がなされているのだ。このことは実質GDPでも米中の格差が2倍になる時期が2030年よりも早まる可能性が高いことを意味する。

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NHK Newsweb 2020年12月27日 12時19分 より引用

www3.nhk.or.jp

 

以上、トランプ政権下での米中の実質GDPの推移を見てきたが、トランプは中国経済弱体化という目的を果たせなかったという結果に終わったことが分かる。

特に2020年度はトランプ自らの失策によって、中国経済を更に優位にしてしまったが、このことはトランプが指導者として、能力的に劣っていることを示唆している。ニュージーランドや中国に近い台湾のコロナ封じ込めの成功を見れば、中国の責任を声高に主張するトランプは無能にしか見えない。ティラーン元国務長官がトランプを「moron」(※軽度知的障碍者の意)と評価し、伊藤貫氏も同様の評価を下しているが、2020年度のトランプの失策はそのことを裏付けているだろう。

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ティラーソン元国務長官(トランプ政権下)

以上見てきたように、トランプは、対中戦略の要である「中国経済を弱体化し、中国の優位性を低めるという戦略目標」を達成できなかったばかりか、逆に米中の経済力差を拡大してしまうという惨憺たる結果を生み出してしまった。そのことは、日本が核武装する時間を稼ぐために、米中の経済格差が二倍になる時期をできるだけ遅らせるという日本にとって死活的な戦略目標を棄損し、日本を滅亡へと更に追い打ちをかけるものであった。

したがって、トランプを応援する人たちは、日本の滅亡に手を貸していると言わざるを得ない。しかし、彼らはその事を自覚できていない。おそらく、トランプの実像を理解できずに、トランプが中国と戦ってくれているというイメージだけで、トランプを支持してしまっているのだろう。

自立しようとせず、他国の首相に頼るという思考をしてしまう時点で、植民地で飼育された家畜と同等である。家畜には、ただ与えられた餌を食べる能力しかないから、思考力などない。トランプ応援団は家畜の平和を貪る売国奴なのである。

彼らは何かが正しいかどうかを判断する時、「その説明に現実性があり、論理性もあるから、それが正しいと判断する」のではなく、「元外交官などの権威のある人がそう言っているから」とか「正しそうな感じだから」という理由で、それが正しいと判断してしまうのである。だからトランプ支持者は、同時に陰謀論支持者でもあるのだ。前回と前々回と同様、この人たちの知的貧困ぶりには呆れざるを得ない。

そして、このトランプ応援団を扇動しているのが、日本の国防について最も真剣に考えなければならない責任を持つ保守の言論人たちである。このことは、日本の外交・国防議論の知的レベルの絶望的な低さをよく表している(もし、そうでないのならば、この人たちは、中国を利する方向に手を貸しているのだから、中国の工作員であろう)。


日本が本来選択すべきまともな戦略は、できるだけアメリカに時間稼ぎをしてもらい、その間に核武装を進めることである。だから、自分が選挙に当選するためのイメージアップのためだけに外交を行い、まともなコロナウィルス対策もできないようなトランプのような大統領よりバイデンの方が良いだろう。

ただし、それは、日本が米国政府と核武装の交渉をして、それを成功させることが前提の話である。そうでなければ、バイデン政権下でも、日米同盟という名の日本の国防無力化政策を強いられたまま、ずるずると対米従属を続け、米国に見捨てられ、東アジアに丸腰の状態で取り残される結果となるからだ。

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このまま核武装しなければ、日本は東アジアに丸腰で取り残される

しかし、現実には、核の傘の信ぴょう性に関してすら日本の外務省官僚は米政府と議論すらしていない。彼らはアメリカに睨まれることが怖いのである。

日本が核武装するためには、彼らエリートの姿勢を変えさせることが必須である。
 

日本外交のレベルの低さは下記の記事にも書いている。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp