「ミアシャイマー」の思想・ネオリアリズムの国際政治学(YouTube)のブログ

リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析

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バランスオブパワー外交と分断統治される日本(「家畜の平和」)

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大英帝国の覇権(=他国に対する支配)はバランスオブパワー外交によって維持された。

大英帝国の行ったバランスオブパワー外交とは、欧州大陸の各国の力(軍事力)が常に均衡する状態を作ることによって、欧州各国に対する大英帝国の優位性を維持し続ける外交のことである。

各国の力(軍事力)が均衡していると、(小競り合い的な小規模な紛争は起きても、)大戦争は物理的に不可能になるので、欧州大陸の平和は保たれ、その安定は大英帝国経済的利益になったのである。

欧州大陸で他国よりも抜きん出た力を持ちそうな国が現れた場合は、英国がその国と戦争をしてその力を弱めさせて、常に勢力均衡が保たれるようにした。

この仕組みは大英帝国の力(軍事力)を、他国よりも常に優位に置くことができる。勢力均衡を使わずに英国が欧州各国を自分の力だけで抑え込むことと比較すれば、このシステムがいかに効率的なものなのかが理解できるだろう。

 

この勢力均衡の仕組みは、このように国家による国家に対する支配に使われるが、国内を統治する時にも使われている。これは分断統治と呼ばれる。ビスマルクもこの統治手法を国内に適用したと公言している。

ja.wikipedia.org

 

分割統治(ぶんかつとうち、英語:Divide and conquer、ラテン語:Divide et impera)とは、ある者が統治を行うにあたり、被支配者を分割することで統治を容易にする手法。分断統治とも。被支配者同士を争わせ、統治者に矛先が向かうのを避けることができる。統治者が被統治者間の人種、言語、階層、宗教、イデオロギー、地理的、経済的利害などに基づく対立、抗争を助長して、後者の連帯性を弱め、自己の支配に有利な条件をつくりだすことをねらいとし、植民地経営などに利用された

 

 

現在アメリカ国内で起きている左右対立も、分断統治といえる。この左右対立によって、米国を支配している米金融資本家(所得上位0.1%層)に対して、民衆の敵意が向かなくなるので、米資本家はその支配を継続できるからである。この0.1%層の支配を批判せず、むしろ、これらの利益となる金融規制緩和(ボルカールールの緩和)を行ったトランプよりも、0.1%層の支配の解体を訴えるバーニーサンダースの方がマスコミから嫌われていることは、この0.1%層による支配を示唆している。


日本人に対してもこの分断統治が使われている。大英帝国の勢力均衡外交は、支配者は大英帝国で、被支配者は欧州各国であったが、日本の場合は、支配者は米国政府で、被支配者は日本国民(リベラル勢力と保守勢力)である。

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日本の支配者は米政府

リベラル勢力の思想は、経済相互依存関係や国際法、つまり理性や理念によって国家間の紛争は解決できるという、いわゆる理想主義である。米政府が作り日本人に与えた日本国憲法(9条)がこの思想のベースとなった。

他方、保守の人たちの思想は、日米同盟(=日米安保、米国の核の傘)という力(軍事力)によって国家間の紛争は解決できるという、いわゆる対米従属(親米保守)思想である。

この2つの思想は水と油のように相反するからリベラルと保守の双方が一致団結することはない。そして、この2つの相反する思想に洗脳されたリベラル勢力と保守勢力が、互いにいがみ合うことによって、かつて大英帝国に支配された欧州各国が勢力均衡させられたのと同じように、どちらか一方の力だけが強くならないようにされている。どちらかが一方的に強くなった場合に、もしも、その強力な一大勢力が米国の支配に気が付くと、体制転換へ繋がる恐れがあるからである。

しかし、この分断統治には、米政府の支配を強固にするための巧妙な仕掛けがしてある。

現実の国際社会はリアリズム(現実主義)で動いている。リベラルの人たちの信念とは違い、国際社会は、力が全ての弱肉強食の原理で動く世界であり、保守の人たちの信念とも違い、米国の核の傘日米安保(=米国は日本のために戦う)も嘘である。この両者の誤った信念はどちらも、日本が自主核武装することを妨害し、否定する。つまり、どちらかの勢力が強くなったとしても、日本が核武装に向かわないようにされているのである。

現在の日本の政治を見れば、対米従属思想の自民党が政権を握っており、(理想主義思想の)共産党立憲民主党やリベラル系のマスメディアの影響でリベラル勢も決して小さくはない勢力を維持しているから、米政府の思惑通りに勢力均衡がされている。

そして、日本のエリート(政治家・言論人・官僚)は、この支配構造を理解した上で、米政府の意向を汲む間接支配者として機能している。したがって、彼らの左右対立はプロレスと同様、見せかけの対立である。

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日本はリアリズム思考ができる学者も政治家も存在しないという極めて異常な言論空間

「国際社会は弱肉強食の原理で動いている」というリアリズム(現実主義)が、戦後、平和憲法GHQによる「日本人を弱体化させるという戦略」に基づく検閲によって、日本国内でその原理が議論されることがタブーにされ、理想主義による洗脳によっても現実主義を否定する言論空間が作られ、占領終了後も、それが自律的に作動し続けている。これを江藤淳は「閉ざされた言語空間」と名付けた。日本にウォルツやミアシャイマーのような国際政治学の主流派である現実主義派の学者がほぼ皆無で、理想主義派の学者が大勢を占めるという異常な状況は、この「閉ざされた言語空間」の一つの現れである。

日本人は現実世界から隔離された虚構の言論空間の中に閉じ込められている。日本人は、この閉鎖空間が世界のすべてだと思い込まされ、その外にリアリズムという現実の世界があることが理解できない。本音(=リアリズム)の議論ができていないのに、そのことを自覚できていない。保守は対米従属こそがリアリズムだと勘違いしてさえいる(対米従属が現実の国際政治で機能すると勘違いしている)。

日本人は理想主義もしくは対米従属という現実の国際社会では通用しない思想で洗脳されているから、「したたかなリアリズム(現実主義)に基づいて、米国による分断統治が日本人に対して行われている」ことも理解できないのである。そのような残酷なことを米国が行っているということを、理想を信じるリベラルも、米国を信じる保守も理解することができないのだ。彼らの現実から隔離された言語空間の中には「リアリズム(現実主義)」という言葉が存在しないのである。現実とはかけ離れた言論空間の中で、対立するように仕向けられている日本のリベラル勢力と保守勢力の不毛な対立を、米政府はその空間の外から眺め、「自分たちの分断統治が上手くいっている」とほくそ笑んでいる。


(米国の一部だけが悪いだけであり、)米国そのものは悪くないと思わせ、米国批判をさせないように(=対米従属へと)誘導する国際金融資本陰謀論やディープステート陰謀論やトランプ応援団、対米従属を続ければ日本はその見返りに核武装させてもらえると信じる人たち、アメリカの中に日本を核武装させようとする(一大)勢力が存在すると勘違いする人たち、敵国条項があるから核武装できないと思い込む人たち、核実験場が確保できないから核武装できないとあきらめる人たち、数か月あれば核武装できるというウソを真に受ける人たち、グローバル企業によって国家が解体されるというおとぎ話を信じる人たち、法治主義や理念や経済合理性が弱肉強食の国際社会の原理にも打ち勝てると信じる経済相互依存論の大流行は、日本人が現実から隔離され、リアリズムから隔絶された「虚構の言論空間」の中に今も閉じ込められたままであることの証左なのである。

 

※なお、この記事で使用したディープステートと、いわゆるユダヤ陰謀論者(国際金融陰謀論者)たちの言うディープステートは意味が異なる。それについての記事はこちら↓

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp