「ミアシャイマー」の思想・ネオリアリズムの国際政治学(YouTube)のブログ

リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析

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陰謀論者に利用されているミアシャイマー教授

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ミアシャイマー教授は、スティーブンウォルト教授と共著で、「イスラエルロビーとアメリカの外交政策」という本を書いています。


 

この本は、「アメリカの政治システムの中核には、ロビー団体(政治的な陳情団体)の政治活動があり、イスラエルロビーの政治的影響力は大きい。またイスラエルロビーの活動は合法で、その活動の目的はイスラエル国益を実現するためである。とはいえ、イスラエルロビーが米国を乗っ取っている訳ではない。なぜなら、基本的に外国のロビー団体が米政府に勧めてくる政策というのは、他国と米国の国益の両方を満たす場合に、採用されるからだ。例えば、2003年のイラク戦争で、イスラエルロビーによるロビー活動は米国が戦争を起こす原因の一つとはなったが、イスラエルロビー単独では戦争を起こすことはできなかった(ブッシュはなく、ゴアが大統領であれば、戦争は起きなかったetc)。イスラエルロビーのイラク戦争を行うべきという提案に対して、米政府も米国益になると判断して戦争は行われた。ただし、米国益に大きな損害を与えない場合は、米国益に沿わないことがロビー団体の政治的圧力によって実行されてしまうことがある。例えば、パレスチナ問題。」ということなどを説明したものです。
だから、ユダヤ系資本家が米政府を乗っ取って、米政府の意に反することを米政府にやらせているといういわゆるユダヤ陰謀論とは違います。
この本の著者である二人も、このことを強調しているのですが、陰謀論者たちは、それを理解できずに、この本をユダヤ陰謀論の本であると勘違いしているのです。
ただし、パレスチナ問題に関して、「米国の意向に沿わないことが行われていても、米国は看過する」という話も、あくまで、米国益を大きく損なうことがない場合です。
だから、ミアシャイマー教授は、「パレスチナ問題で、米国の国益を大きく損じるような場合は、米政府は、イスラエル政府に厳しい対応をする」と言っています。
この動画でも、そのような趣旨の発言をしています。

www.youtube.com


この動画の要約版はこちら

t.co


しかし、陰謀論者たちは、このような区別も付けられないので、物事の一つの側面や一部のみを見て、それが全体であると決めつけ、ユダヤ系資本家が米国を乗っ取っているなどという事実に反する陰謀論を創作しているのです。

 

また、ウクライナ戦争でも、ミアシャイマー教授は、「アメリカが戦争を画策していた説」を一切肯定していないのですが、陰謀論者は、「ミアシャイマーも、アメリカがウクライナ戦争が起きるように計画して、ロシアに軍事侵攻させるように仕向けたと言っている」などと言って、ミアシャイマー教授を陰謀論の補強に利用しています。


このように、ミアシャイマー教授はいわゆる陰謀論を支持していないのですが、陰謀論者たちは、「ミアシャイマーも、陰謀論を支持している」と嘘を付いて、自分たちの陰謀論の補強のために、利用しているのです。

陰謀論者たちは、ミアシャイマー教授の発言を引用することによって、陰謀論の信憑性を偽装して、無知な大衆を誤った方向に導いています。

彼らのやり方は巧妙なので騙されないように気を付けて下さい。