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リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析

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「国際社会は無法地帯という現実」と、「核兵器廃絶というウソ話」

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広島を訪問したオバマ大統領。ノーベル平和賞も受賞した。(wikipediaより)

日本人は「核兵器は廃絶すべき兵器であり、持つべきではない」と考える人が多い。その最大の理由は、広島と長崎に原爆を投下されたからである。このような悲惨な経験をしたがゆえに、核兵器に対して、恐ろしいものであるという強烈な印象を持ち、そして、このような悲惨な経験を二度としないためには、核兵器というものを世界からなくしてしまえばよいと考えているのである。

確かに、核兵器を廃絶すれば(=全ての核保有国が核兵器を放棄すれば)、核兵器は存在しなくなる。その結果、核兵器が使用されなくなる(という理屈である)。

しかし、この論理には、致命的な欠陥がある。

 その欠陥とは、「国際社会は無法地帯であるという現実認識」の欠如である。つまり、核廃絶論者たちは、「国際社会には、過去にも現在にも、犯罪行為を行う国家を取り締まる国際警察軍や、犯罪行為を行った国を処罰する力を持つ国際裁判所が存在したことが一度もない」という現実を認識できていない。この現実を正しく認識できれば、核廃絶がおとぎ話であることも理解できるようになる。

そこで、まず、「国際社会は無法地帯である」ということを理解することから始めてみよう。
このことの意味を理解するために、日本国内に置き換えて考えてみることにする。日本に、警察や自衛隊という武器を所有する組織が存在するのはなぜであろうか? もし、警察や自衛隊が日本に存在しなかった場合のことを考えてみれば分かりやすい。日本は治安の良い国である。しかし、全ての日本人が善人というわけではない。中には、強盗などの犯罪を企てる者もいる(現実に警察が存在する状態でも、犯罪行為は行われている)。そして、その悪人たちが銃で武装していた場合、善良な市民が彼らから銃で脅され、「金を出せ」と要求されたら、金を出さざるを得なくなる。金を出さずにいれば、銃殺されるからだ。銃で武装した強盗に、素手で歯向かっても勝てる訳がない。

しかし、「そのような犯罪行為を行えば、(強盗が)警察官に銃殺される」、「逮捕され刑務所に入れられる(という処罰を裁判所から与えられる)」のであれば、犯罪者は、犯罪行為を躊躇するようになる。要するに、警察という武装した組織(警察でも抑えきれない場合は自衛隊が出動する)や、裁判所という犯罪行為に対して処罰を与える機関が存在するから、日本国内の治安が保たれているのである。

 

つまり、犯罪者が犯罪行為を行わない(=法律を守る)のは、犯罪者を逮捕・制圧する警察(や自衛隊)や、犯罪者を処罰する力を持つ裁判所が存在するからである。

 

しかし、国際社会にはそのような力を持つ警察も裁判所も存在しない。確かに、国連や国際裁判所は存在する。しかし、それは機能していない。中国によるウイグルチベット内蒙古満州の併合や、国連の決議を無視して行われた2003年の米国によるイラク侵略戦争・日本に対する原爆投下(非戦闘員の大量虐殺)、ロシアによるチェチェン弾圧、イスラエルによるパレスチナへの軍事侵攻などは、いずれも国際法違反の犯罪行為であるが、これらの軍事強国による犯罪行為を阻止するために、国際警察軍による軍事介入(国連軍による中国や米国やロシアやイスラエルに対する軍事攻撃)は行われなかったし、これらの犯罪行為に対して国際裁判所による処罰は行われていない(中国・イスラエル・ロシア・アメリカの指導者は裁判所で裁かれてもいないし、刑務所にも入れられていない!)。

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イスラエルによるパレスチナ占領は、国際法違反である。

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現在までに、核攻撃を行ったのはアメリカだけである(民間人に対する核攻撃)。



ポルポトや旧日本帝国(東京裁判)やユーゴ紛争では、その国の指導者に対して処罰が与えられたが、これらの国は、元々弱小国であったり、敗戦国となって、弱者の状態で裁かれたのであり、強国ではない。弱小国は裁かれるが、強国が裁かれることはないのだ。

 

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東京裁判での東條英機

 

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AFPより引用

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敗戦国の戦争犯罪は裁かれる(スプートニクより引用)




米中露イスラエルなどの力を持つ軍事強国がおぞましい(戦争)犯罪行為を行っても、それを誰も阻止できないというのが国際社会の現実である。つまり、国際社会の内実は警察も、裁判所も機能していない無法地帯なのである。もちろん、常にこのような弱肉強食の原理がむき出しになっているという訳ではない。しかし、特に国家間の(利害)対立が深まった時に、この原理がむき出しになる。


いくら、高邁な演説をし、法律文書を束のように積み上げても、「この協議が決裂するなら、撃つぞ(武力攻撃する)」と言われれば、銃を持った国の方が強い(銃で武装していない国は、銃で武装した相手国に屈服せざるをえない)。結局、最後は(国際秩序を決めるのは)、軍事力である。と、キッシンジャーも言っている。(伊藤貫)

 

そして、先ほど出した例(日本国内に機能する警察や裁判所がなかったとした場合)から導き出した結論と同様、国際社会には、ルール(国際法・国際条約)を軍事強国に遵守させる力を持つ組織がないのであるから、「それらの取り決めが守られることもない(=ルールを無視しようと思えばいつでもできる)という構造」を抱えているということになる。国際ルールが守られているように見えるだけであって、その下には「国際ルールは守られない・無視される」という構造があるということである(真理は表層ではなく、その下にある構造にある)。

 

ここまでで、「国際社会は無法地帯である」、つまり、「国際社会には、過去にも現在にも、犯罪行為を行う国家を取り締まる国際警察軍や、犯罪行為を行った国を処罰する力を持つ国際裁判所が存在したことが一度もない」という国際社会の現実を理解していただけたであろうか? 

 

ここで最初に述べた核廃絶論者たちの話に戻ろう。

核廃絶論者によれば、世界の核保有国が、核廃絶という国際条約に合意すれば、その取り決めを世界各国が守り、核はこの世からなくなるということになるらしい。

しかし、すでに明らかにしたように国際社会は、国際法を無視して、犯罪行為を平気で行う国が存在する無法地帯である。つまり、合意が反故にされるということがたびたび・・・・・




 この記事の続きをお読みになりたい方はこちらより(有料です)。3,525文字です。

(ここまでで、2575文字でした)


主要な内容は、下記の①~③です。

①「なぜ、国際社会は無法地帯になるのか?」

②この国際社会の無政府状態が、核兵器廃絶という理想を実現不可能にする理由

③「国際条約(日米同盟など)は破られる」(リスクが常にある)、その理由

 

 

記事を書くのには、労力と時間とお金(伊藤貫氏の論考が掲載された雑誌の収集等)がかかっていますが、そこから得られる広告収入はほんのわずかです(これまで書いた記事によって得た広告収入はわずか100円です)。このような状態を継続すれば、経済的に破綻します。

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