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エマニュエルトッドがトランプを評価する理由①(反エリートの姿勢)

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wikipediaより

news.yahoo.co.jp

このトッド氏の記事を読んで、「トランプは正しかった」と勘違いする人が少なからずいるだろうが、 この記事の中で、トッド氏はトランプを全面的に評価しているのではなく、「トランプに見られた反エリートの姿勢」を評価している。

反エリートとは、例えば、エリートが推し進めるグローバリズムに反対する反グローバリズム主義であり、別の言い方をすれば、エリート層の意に沿うのではなく、国民の気持ちに沿う政策を行う指導者という意味である。
トランプの反移民政策・発言や「非白人の権利拡張を訴えるBLMへの批判」は、国民(白人)から支持を得たし、製造業の国内回帰を目指したトランプは、国民の気持ちに沿う政策を行ったと言える。

しかし、その政策は成功しなかった。なぜなら、前者は白人からの支持は得られても、人種構成比で40%を占める非白人の多くからの反発を招くものであり、後者はうまくいかなかったからだ(※一度製造業の空洞化が起きると、それを元に戻すことは極めて困難)。また、貧富の格差はトランプ政権下でさらに拡大した。トランプの反エリートの姿勢は、姿勢だけで、結果に結びつかなかったのである。

www.okasan-online.co.jp

 

 

それゆえに、トッド氏はトランプを以下のように評価している。

もしトランプ氏がもっと礼儀正しくふるまい、その経済政策がまっとうなものだと人びとに認められれば、むしろ米国社会を統合するのに役立ったでしょう。

この発言は、「米国社会を統合ではなく分断させる人種差別的振る舞いをせず、所得格差の問題を解決するような経済政策を実行していれば、国民からの幅広い支持を得られただろう」という意味である。

もし私が米国人ならあきらかに民主党左派の支持者です。サンダース派になっていたでしょうけどね。

トッド氏のこの発言には、「バーニーサンダースであれば、トランプとは違い、人種間の対立を煽らずに、所得格差の問題を解決するような経済政策を実行していただろう」という意味も含まれているのだろう。

※参考記事(真の改革者とは?) uipkmwvubg9azym.hateblo.jp



すでに記事に書いたが、トランプは、エリートたちと癒着する富裕層から多額の政治献金を受け取り、「富裕層の利益を拡大させるが、残り9割の国民との所得格差を広げることになる金融規制の緩和」を実行した。トランプが実際に行った政策は、反エリートではなく、エリートに迎合するものであった。トランプにあったのは、その(見せかけの)姿勢だけ(口先だけの反エリート主義)であった。 トランプの実態はペテン師(デマゴーグ)である。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

 

しかし、それでもトッド氏がトランプを評価するのは、(それが見せかけであったとしても)トランプの見せた反エリートの"姿勢"が米国政治家や(※ブレグジットを実行した英国を除き)欧州各国(や日本)の政治家に見られないものだったからであり、エリート層と一般庶民との対立を解決するのに、そのような姿勢を持つ政治家が必要であると考えているからである。


※トッド氏はトランプの反移民という反グローバリズムを評価しているが、すでに記事に書いたように、反移民政策は米国では経済的な理由などで不可能である(※トッド氏は、米国で実際に反移民政策が可能であるかどうかは議論に含めず、反グローバリズムという姿勢があるのかないのかを評価の基準にしている)。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

 

 
トッド氏はこのインタヴューの後半で、トランプの反中国"姿勢"も評価しているが、それについてはまた別の記事にする予定である。