「ミアシャイマー」の思想・ネオリアリズムの国際政治学(YouTube)のブログ

リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析

MENU

トランプが暗殺される可能性を考察する(トランプの正体)

にほんブログ村 政治ブログへ
よろしければクリックお願いします。

トランプが暗殺されるとすれば、既得権益側による暗殺だろうと考える人が多いかもしれない。しかし、その可能性はない。なぜなら、トランプは既得権益層の利益となる金融規制(ボルカールール)の緩和を行ったり、その既得権益の中心にいる米金融資本家からも多額の政治資金(※2020年の大統領選への選挙費用として80億円)を受け取ったり(※下記の英文記事 ※$75 millionは、約80億円)、財務長官などの重要ポストにも既得権益側の人間を採用し、外交でも既得権益の意向に沿う外交政策を行っているからだ。日本に対しても、FTA(不平等条約)締結や日米同盟の深化(=核武装の妨害)など、従来の政権と同じく既得権益層の意向に沿う敵対的な対日政策を行った(※国際社会は弱肉強食の原理で国家が生存競争する場所であるから、力のある米国が力のない日本から搾取しようとすることは当たり前である)。つまり、トランプは既得権益側に属する人間なのである。

www.bloomberg.co.jp

www.forbes.com

 

4年前に、バーニーサンダースが金権政治家のヒラリーを追い詰め、トランプが当選できたのは、この二人が、その既得権益層への富の集中を批判し、貧富の格差の拡大に不満を持つ米国民の90%の支持を得られたからである。「System is rigged(少数の資本家に牛耳られているの意)」というフレーズをサンダースとトランプが両方とも叫んでいた。

www.theguardian.com

www.bbc.com

 

 

しかし、トランプはこの4年間、貧富の格差の解消に動かず、むしろ、その格差を広げる政策を続けてきた。そして、非白人の人種構成比が40%に達し、自分たちがマイノリティーになると怖れている白人層からの支持を得ようとして、4年前とは異なり、リベラル(左翼)を攻撃することに偏重し、真の改革者から単なるネトウヨへと変質している。最大でも国民の60%からの支持しか得られることがなく、それに加えて決して解決される可能性のない人種間対立の問題よりも(※後述)、既得権益層に迎合せずに、国民の90%から支持を得られる「所得格差の解消」へと動く政治指導者がアメリカにおける真の改革者なのである。

www.nikkei.com

www.okasan-online.co.jp

 

白人の多くは、このトランプの変節に気が付けないが、一部は、貧富の格差解消に動かなかったトランプに対して「裏切られた」と怒りを覚えており、トランプのリベラルへの攻撃が、貧富の格差解消の問題と向き合うことなく、白人層からの支持を得ようとするための計算高く狡賢いたくらみであることを見抜いているのである。
さらに、彼らはトランプが政治理念もなく、名声や大衆からの支持やその宣伝効果による富を得ることだけが目的の私利私欲に満ちた人間であること、つまり単なるペテン師であることも見抜いている。トランプがバイデンに敗北したのはその証左である。共和党の地盤であった南部のジョージア州の(大統領選後に行われた)決選投票でも、共和党候補が2敗北を喫した。

www.tokyo-np.co.jp

 

伊藤貫氏も指摘しているが、現在最も人種構成比で伸び率が高いヒスパニックの移民を米国は拒否することができない。なぜなら、移民を受け入れないと経済成長がストップすること、そのような差別をヒスパニック系の米国民が許さないこと、ヒスパニック系移民による低賃金労働がなければ米経済が成立しない仕組みができあがっていること、などがあるからである。

つまり、トランプのリベラルへの攻撃は無意味なのである。いくら攻撃しても、移民の増加は止まることはないし、非白人からの権利拡大要求は増すことはあれ、減ることはないのだ。

このトランプの無意味で、米社会に対立しか生まない政治活動は、貧富の格差こそが自分たちの苦しさの原因だと理解している米国民から見れば、問題を解決する障害にしか見えない。つまり、トランプが左右対立という不毛な争いに白人層を誘導しているせいで、貧富の格差という米国民の90%が不満に思っている問題の解決に向けて、米国民が人種を超えて一致団結できないのである。トランプの言動は富裕層にとっては都合のよい分断統治になっている。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

そこで、彼らが世論を誤った方向に導いているトランプを暗殺しなければならないという結論に辿り着くのは必然である。トランプを暗殺すれば、貧富の格差の問題を解決しようとする新しい指導者が生まれる可能性があるからである(トランプがいる限り、その可能性はないのだ)。

大衆のほとんどは自分で思考する能力がなく、指導者が右と言えば右、左と言えば左に動く能力しかない魚の群れと同等だから、指導者次第で社会は如何様にでも変わるのである。かつてナチスのゲッべルスは「大衆が信じるまで何度でもやれ(嘘も100回言えば真実になる)」と発言し、東条英機も同様の発言をしている。これは2000年以上前のギリシャ時代に、哲学者プラトンが見出した真理でもある。

そして、このような形で表出された怒りは、エリート(政治家・官僚・言論人)の襟を正しくさせ、90%の国民の声に耳を傾けようという姿勢を政治指導者に取らせる圧力としても作用する。


今後もトランプが、社会に影響力を持ち続けるなら(所得格差の問題ではなく、リベラルへの攻撃に執着し続けるならば)、怒った民衆によって暗殺される可能性は高まるであろう。大衆のほとんどは思考力の持たない魚の群れに等しいからトランプを崇めるだけの能力しかないが、そのごく一部には、騙されずに、エリート(政治家、官僚、言論人)の不正義を見抜ける者たちがいるからである。

f:id:uIPKMwVUbg9azYM:20210110010715p:plain

暗殺されるリンカーン大統領

 

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

 

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp