「西部邁 & 伊藤貫」の思想(YouTube)のブログ

リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析

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天安門事件外交文書(日本政府が中国を擁護)が意味すること②(日本はアメリカの仮想敵国である)

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日本には外交主権がない(その1の補足)

jbpress.ismedia.jp

外務省の天安門事件外交文書に関する報道では「(アメリカは反対していたのに)日本が率先して対中制裁解除に動いた(現在の中国の脅威は日本政府のせいである)」という日本に批判的な論評しか見かけないが、日本の外交政策の背後には(日本の宗主国の)米政府がいるということの証左のひとつを示しておく。当時の米大統領ジョージブッシュの自伝である。

この本の中に、1989年7月21日(天安門事件は6月4日)にブッシュが鄧小平に「親愛なる鄧小平殿。先日のサミットの先進国首脳会議の共同宣言の草案には中国を過度に非難する文言がありましたが、アメリカと日本が取り除きました。米議会は中国との経済関係を断ち切ることを求めていますが、私は波風を立てないよう全力を尽くします。今は厳しい時期ですが米中は世界の平和と両国の繁栄の為共に前進しましょう」という書簡を送った話が出てくる。 

 その1はこちら。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

現在でも米政府が日本政府の外交政策を決めているという権力関係は変わらない。だから現在の日本政府の対中外交についても、そのような視点から見ることが重要である。 

 

米国の対中宥和政策には2つの「隠された本音」がある

今回は「米国が対中宥和政策を採択した理由」について述べていくが、ほとんどの日本人はその本当の意味を理解できていない。

広く知られている理由は「中国と自由貿易を続け中国が経済成長すれば人々は自由な社会を求めるようになるから中国は民主化し平和な国家となる。だから米国は中国と敵対すべきではない(中国の経済発展に協力すべき)」といういわゆるエンゲージメント政策である。
しかしこの表立った理由の背後には報道されるのことのない米政府の2つの"隠された本音"がある。

 

米国の対中宥和政策に隠された本音その1 (米国の世界支配戦略)

まず1つ目はこの対中戦略のベースには「世界を米国一国だけで支配する」という米国の国家目標があるということである。
米国は「中国が民主主義社会になれば、米国は中国(政府)より優位になれる」と考えているから対中政策としてエンゲージメント政策を採用したのである。つまり世界支配という米国の国家戦略を実現するためである。
要するに、世界平和のためや中国人民の自由や権利のため等の利他的な理由(=正義のため)ではなく「米国の国益を増大させる・米国が世界を支配する」という利己的な理由のためである。
米国が(今も)「世界をアメリカだけで支配する」という国家戦略を持ち続けているという事実が報道されることはない。

 

米国の対中宥和政策に隠された本音その2 (日本封じ込め戦略)

二つ目は、「日本を封じ込める」ということである。
これについて説明しよう。

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1972年の周恩来キッシンジャーの会談

「米国にとって日本は仮想敵国である。そして日本を封じ込めるために米国一国ではなく米中共同で日本を抑え込む」という対日(対中)戦略を1972年の「キッシンジャー×周恩来」会談から米国は採用するようになった。
これはジョイントコンテイメント(共同封じ込め)政策と呼ばれる。
天安門事件当時のブッシュ(父)政権もこの政策を採用していた。
だから、当時の米政府は「この事件を契機に中国の経済発展が頓挫すれば米中共同で日本を抑え込むという戦略が実行不可能となってしまう」と当然考えたであろう(そのような趣旨のブッシュ大統領の発言も残っている)。
つまり「対中制裁解除などの中国擁護政策は中国の経済を発展させることによって日本を抑え込むためであった」のである。
当時の日本政府がこのことを自覚していたのであれば日本衰弱化を自ら推し進めようとしていたということになるし、自覚できていなかったのであれば米国の本音を見抜けなかった(米国に騙されていた)ということになる。
そのどちらであったとしても日本政府自らが日本の安全保障を危機に陥らせることに手を貸したことには変わりはない。

国際政治に少し知識のある人であれば「日米同盟の目的は二重封じ込めである」(瓶の蓋論などとも呼ばれる)と理解している人も多いだろうが、実はそれは米ソ冷戦時代までの古い話である。

(1972年から)冷戦終了までの米国の対日政策は「ソ連に対しては二重封じ込めを行うと同時に、米中共同で日本を封じ込める」というものであり、冷戦終了後は日本にはソ連を抑止する(封じ込めの)役割はなくなったから米国の対日政策は「米中によるジョイントコンテイメント」のみに変化したのである。
このことは日本が米国の"真の"仮想敵国となったことを意味している。
この辺りの話は伊藤貫氏の「自主防衛を急げ」に詳述されている。

実は、米国の日本に対するこのような敵対的な姿勢は現在も変化していないのだが、ほとんどの日本人はこの現実を認識できていない(この当時と現在の日米同盟の在り方が同じであることがその証左のひとつである)。
 
このような話を信じることができないという人には伊藤貫氏の著作を通読されることをお勧めしたい。いきなりミアシャイマーやC・レインのような国際政治学(リアリスト学派)の学者の(翻訳された)著作を読むより現実の国際政治の理解は容易であろう。

 

日本人は本音の外交議論をすることができない。その理由とは?

外務省の天安門事件外交文書に関する報道の中で上述したような指摘がなされていることはおそらく皆無であろう。

その理由はもしそうした実態(米国の本音)が報道されると(米国への不信感が強まり)対米従属を国策としている日本国の体制を揺るがしかねないからである。

また日本の国際政治学者たちは理想主義派の国際政治学の教育を受けリアリスト学派について知識が乏しく現実主義(リアリズム)に基づく思考ができないから、このような本音の議論をする能力がないということもある。

このように本音と建前を使い分ける政治家の(隠された)本音を見抜くためには米国の国家戦略などの全体図(大きな構造)についての理解が不可欠である。
その理解が浅いから上辺だけの言葉を真に受けてしまい国際情勢の分析を誤るのである。

では現在の米国の対中・対日政策の"本音"は何であろうか?
それを理解するためには今回行った論考がその思考のためのベースとして必要である。
それについてはまた別の記事にする予定である。

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