「ミアシャイマー」の思想・ネオリアリズムの国際政治学(YouTube)のブログ

リアリスト学派の国際政治学による日本の外交・国防、国際情勢の分析

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米国の国家戦略(世界支配戦略)と「トランプの外交政策への評価」

米国の世界支配計画(戦略)が始まった1890年代から現在までの流れをざっと眺めてみよう。

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マニフェストデスティニー

アメリカが1890年代に世界覇権を握ることを念頭に立案したグランドストラテジー(基礎的な国家戦略)は、「西半球(アメリカ大陸)のみならず、西欧と東アジアを支配する(覇権国の出現を許さない)」というものであった。その目標は、第二次世界大戦で欧州の覇権を狙っていたドイツを潰し、アジアの覇権を狙っていた日本を潰すことによって達成された。戦後アメリカは、世界覇権を握ることを念頭に、西欧、東アジア、中東という三重要地域に軍隊を駐留させ、支配し、ソ連を封じ込めるというグランドストラテジーを実行に移した(二極構造)。

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バランスオブパワー外交と分断統治される日本(「家畜の平和」)

大英帝国の覇権(=他国に対する支配)はバランスオブパワー外交によって維持された。

大英帝国の行ったバランスオブパワー外交とは、欧州大陸の各国の力(軍事力)が常に均衡する状態を作ることによって、欧州各国に対する大英帝国の優位性を維持し続ける外交のことである。

各国の力(軍事力)が均衡していると、(小競り合い的な小規模な紛争は起きても、)大戦争は物理的に不可能になるので、欧州大陸の平和は保たれ、その安定は大英帝国経済的利益になったのである。

欧州大陸で他国よりも抜きん出た力を持ちそうな国が現れた場合は、英国がその国と戦争をしてその力を弱めさせて、常に勢力均衡が保たれるようにした。

この仕組みは大英帝国の力(軍事力)を、他国よりも常に優位に置くことができる。勢力均衡を使わずに英国が欧州各国を自分の力だけで抑え込むことと比較すれば、このシステムがいかに効率的なものなのかが理解できるだろう。

 

この勢力均衡の仕組みは、このように国家による国家に対する支配に使われるが、国内を統治する時にも使われている。これは分断統治と呼ばれる。ビスマルクもこの統治手法を国内に適用したと公言している。

ja.wikipedia.org

 

分割統治(ぶんかつとうち、英語:Divide and conquer、ラテン語:Divide et impera)とは、ある者が統治を行うにあたり、被支配者を分割することで統治を容易にする手法。分断統治とも。被支配者同士を争わせ、統治者に矛先が向かうのを避けることができる。統治者が被統治者間の人種、言語、階層、宗教、イデオロギー、地理的、経済的利害などに基づく対立、抗争を助長して、後者の連帯性を弱め、自己の支配に有利な条件をつくりだすことをねらいとし、植民地経営などに利用された

 

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米民主党悪玉論の矛盾(米国の左右対立と人種構成比)

アメリカの現在の人種構成は非白人が40%、白人が60%という比率になっている。
(2024年に20歳以下で、2040年代には全人口で白人はマイノリティーになる)

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BBC NEWSより引用

www.bbc.com

既得権者は白人であるが、人口比で過半数にまで近づいた非白人はその数のぶんだけ社会での発言力を高めるから、(雇用面、教育面などでの)権利拡大や差別撤廃を求めるし、そのことによって、白人は自分たちの既得権益を失うことになるのだから、(差別意識のある人が多い)白人と衝突することになるのはごく自然である。

日本における非日本人(在日外国人)の人口比は2%に過ぎないが、日本でも右の一部の人たちが在日外国人が優遇されていると抗議デモなどで反発を強めているのを見れば、米国の40%という比率がいかに高いものなのかが分かるだろう。

つまり米国内の白人と非白人の対立は、人種構成比の変化によって起きる不可避の出来事なのである。このことは10年以上前から伊藤貫氏が指摘し続けてきた(米国内の学者や米政府高官にも同様の指摘をしてきた人がいる)。

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大衆ではなく日本のエリート(言論人・政治家・官僚)が日本を滅亡に導いている

「1億数千万人の日本人の中でまともな人は1万人しかいない(西部邁)」ということは日本人の愚民率は99.99%であるということである。

「社会を啓蒙しようなどと偉そうなことを言っても、社会の知的水準は上がらないとトクヴィルも言っている」という伊藤貫氏の発言も、これと同じ意味である。

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アレクシ・ド・トクヴィル

トクヴィル(フランスの政治思想家。1830年代にアメリカの民主主義を分析した古典的な本を書いた)

「まとも」とは「現実的で論理的な思考ができる」という意味である。 

日本が現在置かれた状況の中で現実的で論理的な国防政策は自主核武装のみであるが、日本の99.99%の人たちが自主核武装以外の国防政策を正しいと信じ込んでいる。国際金融資本陰謀論者たちは精神武装を、護憲左翼系の理想主義者たちは経済相互依存論を、親米保守思想の人たちは対米従属(=米国に防衛を依存すること)を日本のあるべき防衛政策だと信じ込んでいるのである。

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自主核武装と他3つの防衛政策は根本的に異なる
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文献 世界金融経済の「支配者」 東谷暁 2007年

世界金融経済の「支配者」 東谷暁 2007年

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ユダヤ陰謀論の矛盾を考察することによって、現実の金融資本主義の仕組みが見えてくる。

内容は、FRBの成立過程、FRBと米政府との関係性、基軸通貨と世界覇権、米国による収奪システム、日本と米国債ユダヤ系資本家(ジョージソロスなど)の実像、金融資本主義と産業資本主義など。

無知がユダヤ陰謀論というデマを生みだす。

「中国の軍事的な示威行動の意図(本音)」

www.news24.jp

 

米中が軍事衝突すると主張している人が少なくないが米政府は核武装国とは戦争しないと決めているから中国と戦争するつもりもない。その理由は米国が敗北するからであるが、その論理については伊藤貫氏の書籍などで核戦略論について学んでいただきたい。

ではこの中国の軍事行動は何を意味しているのであろうか?

これは示威行動である。
自らの軍事力を誇示することによって米国に「中国にはかなわない」と思わせるためである。ペリーが黒船で日本にやって来て日本人をおののかせたのと同じ理屈である。

国力を上げた米国がモンロー主義に基づき西半球から欧州国を追い出したのと同じことを中国はやりたいのである。

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アメリカは、西半球から欧州国を追い出し、モンロー主義(地域覇権)を確立した
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天安門事件外交文書(日本政府が中国を擁護)が意味すること③(日本は国家として機能不全状態にある)

前回の記事(その2)↓

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

 

今回もこの外交文書について論考してみたい。

その1では日本には外交主権がないこと、その2では米国が対中宥和政策という外交政策を選択した理由(米国の世界支配という国家戦略と日本封じ込めという対日戦略)を論じた。

前々回の記事(その1)↓
uipkmwvubg9azym.hateblo.jp


日本が対中外交で失敗した原因として、外交主権喪失以外の原因を考察する

今回は対中宥和政策という失策を日本が選択することになった要因に関して、「日本には外交主権がない」という以外の別の要因を考察していく。
つまり(外圧ではなく)日本の内部からこのような誤った政策を(積極的に)選択する力が働いていたのかどうかである。

このような外交的失敗を日本が犯したことの原因の一つとして日本の「経済優先姿勢」がよく挙げられるが、結論を先に言えばこの原因の深層には日本という国が抱えている国家として非常に深刻で大きな(構造的)欠陥がある。

その欠陥を明らかにするために、日本が地政学的に見てどのような状態に置かれているのかを理解することから始める。


日本は三覇権構造の中にある(地政学的に世界で最も危険な場所にいる)

日本は米中露という三覇権国(軍事で他国を侵略する国)に包囲されているという地政学的に極めて危険な場所に存在する。
それゆえに、それら3カ国からの侵略を防ぐことが日本国が生存するためには必須のことになっている。
言うなれば、日本は侵略を防ぐための有効な方策をとらなければこれら3覇権国から侵略され滅亡させられてしまうという状態に置かれているのである。

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三覇権構造の中にいる日本
(地図で見れば一目瞭然だが米露中に取り囲まれ
地政学的に非常に危い位置に存在している)

その三覇権国のうちの米露からの侵略を阻止するために、(その賛否や功罪や手法は別として)明治維新日露戦争や太平洋戦争を日本は行ったのである。
また中国が核実験に成功した時には日本政府は本気で核武装の検討をしていた。
つまり三覇権国の脅威を意識した時から(近代以降)、日本国は常に少なくとも「その脅威に対処しようとする姿勢」は持ち続けていたのである。
強力な他国の侵略から国民を守るためには国民を一つにまとめる必要があり近代国民国家が生まれたのだから、これは国家として至極当然で必要不可欠な姿勢である。
以下ではそのような姿勢が「天安門事件当時の日本国の外交」からは完全に消えていたということとその原因を説明していくことによって、日本が抱える「国家として非常に深刻で大きな(構造的)欠陥」を明らかにしていく。

 

米国の外交政策決定のプロセスとは?

「対中宥和政策」という外交政策を日本政府が進んで選択しようとしたその原因を知るには、外交政策を生み出す「国の構造」というものを理解する必要がある。その構造を米国と比較してみることによって日本がどのような構造を持つ国であるのかを明確にし、対中外交の失敗の原因を突き詰めていく。

対中宥和政策を推進する主要な力のひとつは経済界からの圧力であるが、このこと自体は特に責められるべきことではない。なぜなら経済人は利益を得ることを目的にして活動している人たちであるから日本政府に制裁解除を要求するのは当然の行為である。また多額の政治資金を供給できる能力などを持つ大企業が政治家と癒着し自分たちに有利な政策を行うように政治家を働きかけることも民主主義の制度の中では不可避であるから責められるべきことではない。それは米国も同じである。


「経済優先姿勢」や「(中国が経済的に豊かになれば民主化するという)見通しが甘かった」ということだけを見れば、日米両国とも同じ間違いを犯したということになる。
しかし、(この日米共通の)外交政策(対中政策)を生み出した「構造」は米国と日本では大きく異なるのである。


それを理解するために、まず米国のその「構造」を見てみよう
その2ですでに論考したように米国にとって対中宥和政策は世界支配という国家目標を実現するため、つまり米国の国益のための選択であった。
そして米企業(米資本)が対中宥和政策によって利益を得ようとすることは、同時に米国の国家目標の実現(=国益)に寄与するものである。国家戦略という枠組みの中で米企業が動いている。米企業は「国家が主であって企業はその従という構造」の中に存在すると言える。「構造」は「米政府と米企業との関係性」と言い換えることもできるだろう。

また今回の論点からはずれるが、この「構造」はいわゆる国際金融資本陰謀論のみならず、大資本家や大企業が米国(などの大国)を意のままに操れるという「陰謀論」が嘘であることの根拠のひとつにもなる。
企業の利益と国家の利益(=国益)がいつも必ず一致するとは限らない。国家は私企業のためではなく国益のために動く存在だから、両者の利益が一致しない時は普通の国国益を優先して動く。国益を無視して私企業の利益を優先するような国家は国益を第一優先にして動く他国との競争に敗北し滅びるからである。

 

「日本の国防政策」と「国防意識の欠落した日本政府・官僚」

 

次に日本の外交政策を生み出すその「構造」を見てみるが、その前に何が国家にとって最も重要なことであるのかを明確にしておく。

すでに述べたように日本に限らず国家にとって最も重要なこと・最優先にすべきことは他国からの侵略を防ぐことである。
なぜなら他国からの侵略を許せばその国家は滅亡する(=その国の国民の生命と財産が失われる)からである。いくらお金儲けをしてもそれが他国から奪われ命も奪われればそのお金儲けには何の意味もない(単なる無駄な行為になる)。だから北朝鮮も中国も経済発展よりも核武装によって他国からの侵略を阻止することを最優先したのである。ゆえに日本国(に限らずどの国)にとっても最も重要な最優先すべきことは防衛政策になる。
言い換えれば「国家として最低限しなければならないことは他国から侵略を阻止できる防衛政策を選択しそれを実行する」ということである。「日本国内の警官が銃を保持すること」に反対する者は皆無といって差し支えないのであるから、国家が防衛のために武力を肯定することに異論を唱える人は護憲左翼思想のような非現実的な思考の者以外はいないであろう。

日本が採用している防衛政策は(その是非は別として)自主防衛(=核武装)ではなくバンドワゴン(=米国のような軍事強国の絶対的・圧倒的覇権にしがみつくことによってその強国に自国を守ってもらう)であるから、三覇権国の中の中露を抑え込むこと(=米覇権の絶対的優位性を維持すること)は自国の生存のために必須の条件である。
だから当然日本は中国への経済制裁を中国の国力を減退させる機会として利用しようと動かなければならなかったのである(核武装国の中国の経済力を高めることは米国の優位性を低めるので日本の生存を脅かすことに直結する)。

しかし現実にはそのような動きがなかったどころか、驚くべきことに自ら率先してその逆(中国擁護・制裁解除)に動いたのである。
そこにはかつては三覇権国からの侵略に危機意識を持ち、常にそれに対処しようとしてきた日本国の姿勢は微塵もない。 
このことは何を意味するのであろうか?

 

日本は国家として機能していない

 

他国からの侵入を阻止することは国家として最低限度の役割なのだから、その役割を果たそうとしなかった日本は国家として機能していないことを意味するのである。そしてそれは「日本には日本を他国の侵略から守ろうとするエリート(官僚・政治家)が(実質的に)存在しなかった」ということと同義である。

ここで先ほど明らかにした米国の「構造」と日本のそれとを比較し、日本の「構造」を明確にしてみよう。
米国は「国益を最優先にして動く国家という枠組みの中で企業(資本)が活動する」という構造の国である。
一方、日本は「国家として機能していない(=存在しないのと等しい)から、当然国家の枠組みもない。それゆえに企業の要求通りに日本の政治が動いてしまう」という構造の国なのである(国益に反する「企業の圧力」に抗する力であるべき国家が日本には存在しない)。
見た目だけを見れば日本という国家は存在するが、それは形だけに過ぎず「国家としての実体はない」。
だから国益(=国防)に反する「企業の要望のままの対中宥和政策」を日本政府は躊躇なく選択できてしまったのである。
これが日本という国の「構造」なのである。
「対中宥和政策に反対するどころか、逆に率先してそれに賛成した」という日本政府の行動の背後にはこのような構造がある。
 
宥和政策という同じ対中政策を選択した日米だが、その政策決定を生み出した両国の構造はこのように異なる。つまり日本(だけ)は「国家というものが(形だけしかなく)実質的に存在せず、それゆえに企業の要望がそのまま外交政策となる」という国として極めて特殊で異常な構造を抱えているのである。
もし米国が日本と同じ立場に置かれた時に対中宥和政策という(自国の生存を脅かす)外交政策を自ら率先して選択するのだろうかと考えてみれば、日本という国がいかに異常な国であるかが分かるだろう。

この日本独特の構造は「日本のエリートたち(政治家・官僚・言論人)には(他国から自国を守るという意味の)国家意識が欠落している」ということを意味しているが、すでに述べたように経済人が対中宥和の圧力をかけてくるのは当然の行為であるからこの外交政策の失敗を引き起こした要因は「その圧力に屈することなく国益を優先するという当然の責務」を果たそうとしなかった日本のエリートたち(官僚・政治家)にある。
つまり日本のエリート(政治家・官僚・言論人)たちの国家意識(=国防意識)の著しい欠落が日本の国益に反するこの対中外交を積極的に選択させる原因となったのである。その選択には外交主権の喪失(米政府からの圧力)や理想主義思想も影響を与えたと考えられるが、それを割り引いても国防意識が著しく欠落しているということは否定しようがない。
そして彼らの国防意識は過去の日本外交と比較すれば見るも無残な程に著しく劣化している。

北朝鮮が核実験に成功した時に核武装に動こうとした政治家が中川昭一氏一人しかいなかったことも、日本のエリートたちの国防に対する意識が著しく低いことを示してる。同様にこれも日本が国家として最低限度の義務も果たせていないことを意味しており、日本が国家として機能不全に陥っていることの証左である。

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核武装の議論を提案した中川氏は伊藤貫氏の大学時代からの親友であった。

 

国家として機能していない日本の未来

 

このようにエリートが国防のことを真剣に考えていない日本は国家として機能していないのだから日本政府が他国からの侵略を阻止しようと真剣に動くことも決してないし、驚愕すべきことにそれが日本国にとっては極めて自然なことなのである(他国と較べれば極めて異常である)。
国防のことを考えない国なのだから当然他国からの侵略に脆弱(というより無防備)である。
そしてこの無防備な日本の隣には日本を属国化することを国家目標(=国益)にしている中国という強国がいる。
このように極めて危険な状況に日本は置かれているのである。

天安門事件当時にもし日本政府が国益(国防)を重視し中国制裁解除に反対する姿勢を見せたとしても外交主権がない日本の意見に米国が同意したり、それが米政府の方針を変える可能性はなかったであろう。
しかし日本が外交主権を喪失しているという問題よりもより深刻な問題は「日本には日本国の国益を考えて動くエリート(官僚・政治家)が存在しなかった」(=国家として機能していない)ということなのである。
現在もその当時と同様の問題を抱えたままであることは中国の経済成長(と軍拡)によって米国の覇権が揺らいでいるという状況にも関わらずいまだに核武装に動こうとしないというエリート(政治家・官僚・言論人)たちの国防に対する意識の低さを見れば明らかであろう。

国防というエリートとして最低限度の義務すらも果たそうとしない彼らは肩書だけの官僚・政治家・言論人に過ぎない。彼らの正体はエリートとしての資質も能力も欠く、ニセモノの「官僚・政治家・言論人」なのである。

核兵器が存在する現在では、いくらミサイルや戦闘機や軍艦を充実させても核武装しない限り核武装国に対してはそれらの兵器は役に立たない。
米国が日本のために核報復することなどありえないから核の傘を前提にした対米従属(バンドワゴン)も中国などの核武装国の日本への侵略を阻止することには役立たない。
つまり、核武装の議論を一切せず、対米従属を前提として議論をしている日本のエリートたちの国防議論は全てニセモノの議論であり、「議論をしているフリをしている」だけである。我々日本国民は彼らの茶番(嘘)の議論を見せられているだけなのである。

江藤淳が「(独立国)ごっこの世界」と日本を批評したのは1970年のことだが、その時よりも劣化した現在の日本はもはや「(幼稚園児の)ごっこの世界」以下ということになる。現在の日本は「(幼稚園児以下の知性しか持たない)サルたちが我が物顔で跋扈する世界」なのである。

 他国からの侵略を阻止するつもりがない(orそれを考える能力がない)「日本国の方針を決めている無能な日本のエリート」(政治家・官僚・言論人)にこのまま日本国の運営を委ね続ければ、その当然の結果として中国に併合されるという事態を"必ず"招くことになる。そしてこのまま現状を放置し続けるならば、その悪夢は「"実質"GDPで中国が米国の二倍となる」これから5~10年以内に起きるのである。2017年のIMF世界銀行の予測によれば2030年に中国の実質GDPは米国の二倍になるが、コロナによる影響で予測よりも早まる可能性がある。

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この発言は豪州首相との会談中になされた

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2014年にすでに米中の実質GDPは逆転している(実質GDPが経済の実力値)

 

 ※2030年に実質GDPで中国は米国の二倍になるという海外の記事↓

www.visualcapitalist.com

この日本外交の失策の他の原因として、「理想主義思想」がある。
これについてはまた別の記事にする予定である。

天安門事件外交文書(日本政府が中国を擁護)が意味すること②(日本はアメリカの仮想敵国である)

日本には外交主権がない(その1の補足)

jbpress.ismedia.jp

外務省の天安門事件外交文書に関する報道では「(アメリカは反対していたのに)日本が率先して対中制裁解除に動いた(現在の中国の脅威は日本政府のせいである)」という日本に批判的な論評しか見かけないが、日本の外交政策の背後には(日本の宗主国の)米政府がいるということの証左のひとつを示しておく。当時の米大統領ジョージブッシュの自伝である。

この本の中に、1989年7月21日(天安門事件は6月4日)にブッシュが鄧小平に「親愛なる鄧小平殿。先日のサミットの先進国首脳会議の共同宣言の草案には中国を過度に非難する文言がありましたが、アメリカと日本が取り除きました。米議会は中国との経済関係を断ち切ることを求めていますが、私は波風を立てないよう全力を尽くします。今は厳しい時期ですが米中は世界の平和と両国の繁栄の為共に前進しましょう」という書簡を送った話が出てくる。 

 その1はこちら。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

現在でも米政府が日本政府の外交政策を決めているという権力関係は変わらない。だから現在の日本政府の対中外交についても、そのような視点から見ることが重要である。 

 

米国の対中宥和政策には2つの「隠された本音」がある

今回は「米国が対中宥和政策を採択した理由」について述べていくが、ほとんどの日本人はその本当の意味を理解できていない。

広く知られている理由は「中国と自由貿易を続け中国が経済成長すれば人々は自由な社会を求めるようになるから中国は民主化し平和な国家となる。だから米国は中国と敵対すべきではない(中国の経済発展に協力すべき)」といういわゆるエンゲージメント政策である。
しかしこの表立った理由の背後には報道されるのことのない米政府の2つの"隠された本音"がある。

 

米国の対中宥和政策に隠された本音その1 (米国の世界支配戦略)

まず1つ目はこの対中戦略のベースには「世界を米国一国だけで支配する」という米国の国家目標があるということである。
米国は「中国が民主主義社会になれば、米国は中国(政府)より優位になれる」と考えているから対中政策としてエンゲージメント政策を採用したのである。つまり世界支配という米国の国家戦略を実現するためである。
要するに、世界平和のためや中国人民の自由や権利のため等の利他的な理由(=正義のため)ではなく「米国の国益を増大させる・米国が世界を支配する」という利己的な理由のためである。
米国が(今も)「世界をアメリカだけで支配する」という国家戦略を持ち続けているという事実が報道されることはない。

 

米国の対中宥和政策に隠された本音その2 (日本封じ込め戦略)

二つ目は、「日本を封じ込める」ということである。
これについて説明しよう。

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1972年の周恩来キッシンジャーの会談

「米国にとって日本は仮想敵国である。そして日本を封じ込めるために米国一国ではなく米中共同で日本を抑え込む」という対日(対中)戦略を1972年の「キッシンジャー×周恩来」会談から米国は採用するようになった。
これはジョイントコンテイメント(共同封じ込め)政策と呼ばれる。
天安門事件当時のブッシュ(父)政権もこの政策を採用していた。
だから、当時の米政府は「この事件を契機に中国の経済発展が頓挫すれば米中共同で日本を抑え込むという戦略が実行不可能となってしまう」と当然考えたであろう(そのような趣旨のブッシュ大統領の発言も残っている)。
つまり「対中制裁解除などの中国擁護政策は中国の経済を発展させることによって日本を抑え込むためであった」のである。
当時の日本政府がこのことを自覚していたのであれば日本衰弱化を自ら推し進めようとしていたということになるし、自覚できていなかったのであれば米国の本音を見抜けなかった(米国に騙されていた)ということになる。
そのどちらであったとしても日本政府自らが日本の安全保障を危機に陥らせることに手を貸したことには変わりはない。

国際政治に少し知識のある人であれば「日米同盟の目的は二重封じ込めである」(瓶の蓋論などとも呼ばれる)と理解している人も多いだろうが、実はそれは米ソ冷戦時代までの古い話である。

(1972年から)冷戦終了までの米国の対日政策は「ソ連に対しては二重封じ込めを行うと同時に、米中共同で日本を封じ込める」というものであり、冷戦終了後は日本にはソ連を抑止する(封じ込めの)役割はなくなったから米国の対日政策は「米中によるジョイントコンテイメント」のみに変化したのである。
このことは日本が米国の"真の"仮想敵国となったことを意味している。
この辺りの話は伊藤貫氏の「自主防衛を急げ」に詳述されている。

実は、米国の日本に対するこのような敵対的な姿勢は現在も変化していないのだが、ほとんどの日本人はこの現実を認識できていない(この当時と現在の日米同盟の在り方が同じであることがその証左のひとつである)。
 
このような話を信じることができないという人には伊藤貫氏の著作を通読されることをお勧めしたい。いきなりミアシャイマーやC・レインのような国際政治学(リアリスト学派)の学者の(翻訳された)著作を読むより現実の国際政治の理解は容易であろう。

 

日本人は本音の外交議論をすることができない。その理由とは?

外務省の天安門事件外交文書に関する報道の中で上述したような指摘がなされていることはおそらく皆無であろう。

その理由はもしそうした実態(米国の本音)が報道されると(米国への不信感が強まり)対米従属を国策としている日本国の体制を揺るがしかねないからである。

また日本の国際政治学者たちは理想主義派の国際政治学の教育を受けリアリスト学派について知識が乏しく現実主義(リアリズム)に基づく思考ができないから、このような本音の議論をする能力がないということもある。

このように本音と建前を使い分ける政治家の(隠された)本音を見抜くためには米国の国家戦略などの全体図(大きな構造)についての理解が不可欠である。
その理解が浅いから上辺だけの言葉を真に受けてしまい国際情勢の分析を誤るのである。

では現在の米国の対中・対日政策の"本音"は何であろうか?
それを理解するためには今回行った論考がその思考のためのベースとして必要である。
それについてはまた別の記事にする予定である。

uipkmwvubg9azym.hateblo.jp

天安門事件外交文書(日本政府が中国を擁護)が意味すること①(日本には外交主権はない)

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米マスコミはこの時の小泉首相を嘲笑した。


www.jiji.com

この当時の基本的な全体図(構図)を理解するためには、まず下記の2つのことを認識しておくことが重要である。

一つ目は、1989年の天安門事件当時(※大統領は父ブッシュ)の米国の対中政策は中国宥和政策(ソ連のように敵対し封じ込めるのではなく、中国との友好関係を深めていく)だったということ。

だから米政府は天安門事件が起きた後でも、中国と敵対せずに関係を継続(=中国の経済発展に協力)すれば中国はやがて民主主義社会へと変化し危険な国ではなくなると考えていた。

 

二つ目は(軍事を米国に依存する)日本には外交主権はない(アメリカの言いなり)ということ。

つまり、日本は米国の外交方針に反するようなことはできないし、米国の外交を主導するような権利など与えられていない。

 

この2つのことから下記の結論が導かれる。

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C・レインとミアシャイマーのオフショア戦略の違い

東アジアのオフショアバランス戦略について両者の戦略は全く異なる。

レインの戦略は米軍は東アジアから完全撤退し米国の安全保障上必要な場合はバックパッシング(日本などに中国との戦争を代わりにやらせる)を行う。バックパッシングで中国を抑えられない場合は米軍が直接の介入を行うというもの。
しかしレインは中国が東アジアの覇権を握っても米国の安全保障を脅かす可能性はないと考えているので、米国は東アジアに不介入でいること、つまりバックパッシングも直接の介入も行わない戦略が米国の国益になると考えている(中国と米国との間接、直接の軍事的衝突を否定している)。

一方ミアシャイマーは中国が東アジアの覇権を握れば米国の安全保障を脅かすという前提なので、その戦略は中国の脅威に対してバックパッシングを行い、それでも中国を抑えきれない場合は米国が直接介入をするというものになっている。
つまり、ミアシャイマーは米国と中国との戦争の可能性があると考えている。

従ってどちらの戦略を選択するかの判断は「中国の東アジアの覇権が米国の安全保障を脅かす」可能性についてどう考えるのかによるが、果たしてその可能性はどれほどのものなのだろうか?

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伊藤貫氏が支持するバーニーサンダースの寄稿文(アメリカから独裁者が生まれる)の意味とは?

この国の労働者階級と何十年にもわたり敵対してきた強力な既得権益に挑む勇気を持たねばならない。 既得権益とはつまり、ウォールストリート、製薬業界、医療保険業界、化石燃料業界、軍産複合体、民間刑務所の産業複合体、従業員を搾取しつつづける多くの高収益企業のことだ。 民主党がこうした強力な組織に立ち向かい、この国の黒人、白人、ラテン系、アジア系アメリカ人、ネイティブアメリカ人の労働者家庭のために戦う姿勢を示せなければ、2024年にまた別の右翼の独裁者が選出される地ならしをすることになるだろう。
(バーニーサンダース ※一部抜粋)

courrier.jp

バーニーサンダースは2つの重要な指摘をしている。

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トランプとバイデンのどちらが日本にとって良いのか?

まず米国の対日政策への決定権は、大統領ではなくエスタブリッシュメント(支配階級=米資本家+共和党民主党の議員+官僚や学者などのブレーン)にあるので、どちらが大統領であっても米国の対日政策は変わらない。

それ以前の問題として、アメリカの大統領は米国益のために動くので大統領が日本のために何かをしてくれると期待すること自体が国を危険に晒す誤った思考である。

したがって「どちらの大統領の方が日本にとって良いのか? 」という問いは「どちらの大統領の方が米国の対日支配の不道徳性・非情性を日本人が自覚できる可能性が高いのか?」という意味になる。

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